サルコペニア対策としての高カロリー食品
サルコペニアについて
今後予想される超高齢化社会において近年、サルコペニア、フレイルといった言葉を耳にする機会が増えてきました。サルコペニアは、加齢に伴い骨格筋が委縮し、筋力低下又は身体機能の低下を伴うときに診断され、転倒、骨折のリスクが高くなるだけではなく、糖尿病、腎臓病をはじめとして様々な疾患の発症・進展リスクを高め、生命予後や心血管イベント発症とも関連していると言われています。最近ではダイナペニア(Dynapenia)という言葉も登場し、「握力は弱いが筋肉量の低下がないもの (握力低下あるが、筋肉量を測定すると正常)」という方をこう呼んでいます。言い換えると、「筋肉の量」はあるが、「筋肉の質」が低いということが言えます。
サルコペニアの診断
筋力低下を重視したEWGSのサルコペニアの診断基準が最近発表となっています(EWGSOP2)
(参照:日老医誌 2019;56:227―233)
アルゴリズムについてはリンク先の内容をみてもらえるとわかると思いますが、筋肉の質という部分まで評価する内容となっていると思います。ただし、日常外来診療においてこの内容に基づいて診断することは難しいことから、一般診療で特別の器具なく疑いの診断が可能となっている(下腿周囲径+握力など)、アジアの診断基準である「AWGS2019」が用いられることもあります。
薬局の中でのサルコペニア
日々の仕事の中でも、年齢を重ねるとともに食事量が減り、体重が少しずつ減少していく患者さんは多くみられます。3食きちんと均等に食べることだけでなく、間食をとることで摂取カロリーを増やそうとしても「なかなか摂れない」という話もよく聞きます。
医療の中で考えると、経腸栄養剤である「エンシュア・エンシュアH」「ラコールNF」といったもので補うという考えもあると思いますが、これが処方される時には既に食欲が落ちてしまっていることが多くあります。
筋力を落とさないための食事方法を栄養士さんと相談しながら色々試みていますが、「これだ!」という名案は思い付かないものです。
サルコペニアを予防するために
高カロリー食品
現在薬局ではいくつか高たんぱく、高カロリー食品の取り扱いがあります(一部下画像)。
しかしどれも+αで食べる必要があるものばかりでした。今回、いつもの食事に少量添加するだけで、エネルギーとたんぱく質を効率よく摂取できる【明治栄養アップペースト】を栄養士さんに教えてもらったので、患者さんにすすめる前にまずは自分で実際に食べてみることにしました。
明治栄養アップペースト
商品はこちらです。
栄養成分表示 | 100g当たり | 大さじ1杯(15g)当たり |
エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物 -糖質 -食物繊維 食塩相当量 ナトリウム 中鎖脂肪酸 |
667kcal 23.0g 59.0g 15.0g 11.0g 4.0g 0.28g 110mg 48.0g |
100kcal 3.5g 8.9g 2.3g 1.7g 0.6g 0.04g 17mg 7.2g |
おおさじ1杯(15g)で、エネルギー100kcal、たんぱく質3.5gがとれます。
1本165g入っているので、100kcalを11回分とれる計算になります。
これくらいの量だと思います。
塩分も少なく、カリウムも表示上は含有されていないため、高血圧や蛋白質制限がないCKDの方にも勧めやすい食品ではないかなと思います。
実食
そのまま食べてみると、見た目はシュガーバターがチューブに入っていたような外観で、食感は少しジャリジャリしてミルクっぽいクリーミー感と中鎖脂肪酸(MCT)が入っているためか少し脂みを感じました。
まずはコンソメスープに混ぜてみると
左が加える前、右が加えた後です。
思っていた以上に見た目が変わったなという印象ですが、パンフレットでも大さじ1杯加えるのはハンバーグに混ぜるなど外観がわかりにくいものに限定されていました。みそ汁では大さじ1/2杯、おかゆでは小さじ1杯といった感じです。
実際に食べてみると、ややクリーミーで脂みがついたなという感じはしますが、もとの料理の味は保たれていました。見た目の問題さえ解決すればコクが増してむしろ美味しくさえ感じました。
次はもっと色見の濃い汁(コーンスープやみそ汁など)で挑戦してみたいと思います。
次に、パンフレットではおかゆでしたが、ごはんにものせてみました。
さすがに、水気がないと「ごはん」と「ペースト」それぞれの味が個性を主張してきます。アツアツの炊き立てご飯に乗せればもしかしたら溶けていい具合になるのかもしれませんが、少し冷めたごはんでは失敗でした。
さいごに
今回実食してみて、大雑把な味の雰囲気はつかめたので、今後栄養士さんと話をしたり、患者さんにすすめていく中でどういった料理に混ぜるのが適当なのかも検討していければいいと思っています。
まずは、体重減少がみられる高齢者の方の「体重減少STOP!」を目標にしていきます。