新しい片頭痛発作治療薬(ラスミジタン)に期待する5つのこと

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現在の片頭痛発作治療

トリプタン製剤

現在の片頭痛発作治療は、5-HT1B/1Dである「トリプタン製剤」が中心となっています。

トリプタン製剤は、片頭痛治療に特化した薬で、その服用により生活の質(QOL)が向上することから10数年以上使用されてきました。安全性は高い薬とされていますが、5-HT1B受容体を介する血管収縮作用をもつため、心血管・脳血管疾患の既往がある患者では禁忌とされており、やや使いにくい面も持っています。

また、トリプタン製剤はその血中動態から服用後2時間以内に効果が認められますが、服用タイミングによってはその効果が十分に得られない場合もあります。トリプタン製剤は約40%の片頭痛発作において効果が認められず、約25%の片頭痛患者では十分な効果が得られなかったとされる報告もあります。

こういった背景から新たな片頭痛発作治療薬の発売が待ち望まれていました。

新しい片頭痛治療薬に期待されること

優秀な片頭痛治療薬とは、「2時間以内に頭痛が消失」し、「普段と同じレベルの活動が可能」となり、「眠気、締め付け感など不快な有害事象がないか最小限」である薬剤とされています。これを考慮して、新しい片頭痛治療薬に期待される5つの点を挙げてみました。

1.血管収縮作用がなく、心血管・脳血管疾患の既往がある人にも使用できる

2.服用タイミングにかかわらず効果が得られる

3.トリプタン無効例に対しても効果がある

4.トリプタンと併用が可能

5.眠気、ふらつきの副作用が少ない

新たな片頭痛発作治療

ditan系薬

ラスミジタン

待望の片頭痛発作治療薬である『ラスミジタン』が令和4年4月20日薬価収載されています。

主なポイントをまとめたものを以下に示します(著者作成)。

トリプタンのジェネリックの薬価と比較すると、やや高くなる印象はあります。トリプタンと異なり、投与間隔の指定は特にありません(2時間や4時間の間隔がトリプタンでは必要)。

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医薬品リスク管理計画書の中で特に注意したいものは、【重要な特定されたリスク】に該当している『傾眠、めまい等の中枢神経症状』でしょう。用量依存的に認められる症状で、その頻度も高いため服用初期には特に注意が必要です。

やはりラスミジタンの一番の特徴としては、トリプタンの血管収縮作用のために使用できなかった「心血管・脳血管疾患の既往がある患者」でも使用できる点ではないでしょうか。

図の中では以下の点について説明していますが、これらのプラスの面を考慮しトータルで考えると、新たな作用機序の薬としてその有用性は評価できるのではないかと個人的には考えています。

トリプタン無効例にも効果があるのか?

トリプタン無効例に対しても効果が認められたとの報告があります。

服用時間が遅れても効果があるのか?

発症早期に服用することが望ましいとされていますが、発症後1時間を超えた時点での服用でも効果が認められています。

トリプタンとの併用はできるのか?

インタビューフォーム上では、トリプタンとの併用による上乗せ効果は検討されていないとの記載がありますが、作用機序が異なること、現時点まで実際に併用している例も見受けられるが査定を受けていないことなどから、今後の臨床試験の結果によっては使用可能となっていくかもしれません。

今後臨床試験などが重ねられ、小児片頭痛などの使用も検討されていけば更にその使用の幅は広がっていくものと思われます。

小児片頭痛治療および予防(現在)
【軽度】

アセトアミノフェン 15mg/kg

イブプロフェン 10mg/kg

【中等度〜重度】

鎮痛薬無効時はトリプタン
・6〜10歳、50 kg未満=約半量
・10歳以上、50 kg超=成人量

〔FDA〕 6歳〜:リザトリプタン 12歳〜:ゾルミトリプタン、スマトリプタン

★予防薬★
シプロヘプタジン(ペリアクチン)が頻用されている
・就寝時に1日2〜8 mg

うつがある場合:アミトリプチリン
・就寝時に0.25~1mg/kg

てんかんがある場合:トピラマート
・就寝時に1~2mg/kg

まとめ

新しい片頭痛治療薬に期待する5つのことの内、4つはある程度条件をクリアしていたのではないでしょうか。残り一つの有害事象(眠気、ふらつき等)については、トリプタンよりも強く出るといった報告もあり、今後の実臨床での使用報告が待たれます。有害事象を最小限にするためには、少量から注意深く服薬時の副作用発現状況をモニタリングして、適切な使用方法を薬剤師として提案していく必要があります。

〔参考資料〕
1)片頭痛.薬局,72(8),2021
2)Rubio-Beltrán E, Labastida-Ramírez A, Villalón CM, MaassenVanDenBrink A. Is selective 5-HT1F receptor agonism an entity apart from that of the triptans in antimigraine therapy? Pharmacol Ther. 2018 Jun;186:88-97. doi: 10.1016/j.pharmthera.2018.01.005. Epub 2018 Jan 17. PMID: 29352859.(トリプタンとディタン系の相違)

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