喘息だけでなく、鼻、皮膚アレルギーにも効果のある注射薬

2021年8月22日

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はじめに

先日とある患者さんが

「今日採血しました。私1年を通してアレルギーがあるから採血してIgEの濃度を調べてもしかしたら注射を使うことになるかもしれません。保険適応になる治療なのかわかりませんが」

とおっしゃいました。

血清IgE濃度を測定してから投与を決める注射薬といえば【ゾレア皮下注75mg/150mgシリンジ®(オマリズマッブ)】があります。

薬価は75mg製剤で14,768円、150mg製剤で29,104円と非常に効果な薬剤で、血清IgE濃度によって投与量は異なってきますが、体重50~60kgの方で58,208~116,416円(保険負担割合が3割の方で、17,462~34,925円)かかることになるんですが。

今回は生活保護を受けている患者さんだったため、そういう選択肢も出てきたのかもしれません。

他に、抗ヒスタミン薬を3~4剤併用しても効果が得られない慢性蕁麻疹の患者さんに使用されている症例がありますが、その方も生活保護を受けている患者さんです。

良い薬が発売されても費用面も考慮して薬価設定をしてもらわないと宝の持ち腐れになってしまうのではないでしょうか。

今回は当該患者さんが使用を開始したときのために、ゾレア皮下注の特徴について調べておこうと思います。

喘息の注射薬 ゾレア皮下注とは?

画像:ノバルティスファーマホームページ

 ゾレア皮下注にはバイアル製剤とシリンジ製剤があります。バイアル製剤は2021年3月に75mg製剤が販売中止となっているため現在は150mg製剤のみとなっていますが、シリンジ製剤は両規格ともあります。

ゾレア皮下注は、ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり、IgEと高親和性受容体(FCεRI)の結合を阻害することで、好塩基球、肥満細胞など炎症細胞の活性化を抑制します(画像:ノバルティスファーマ患者用説明サイト)。

現在は病院で注射を受けるために2又は4週間毎に通院する必要がありますが、厚生労働省は、「オマリズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ゾレア皮下注)を新たに診療報酬の「在宅自己注射指導管理料」の対象薬剤に加えることを決めているため、在宅での自己注射も可能となってくるでしょう。

皮下注製剤はここ最近増えていますが、在宅自己注射指導管理料の対象となる条件について2020年12月23日の中医協の資料で公表されていますので掲載しておきます。

14日以上の間隔をあけて注射を行う医薬品に該当するので、最低でも14日制限が解除される1年を経過しないと在宅注射は不可ということになります。今回の件に関しては、複数の学会要望を受け、中医協総会が審議し、承認しています。

ゾレア皮下注の適応症は?

適応症としては、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹と多くの適応症を有しています。2009年1月から「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」、2017年3月から「特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)」の適応で使用されており、2019年12月から「季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る)」の適応が追加されています。

尚、季節性アレルギー性鼻炎以外の適応症(気管支喘息、特発性の慢性蕁麻疹)では、2021年8月12日より在宅自己注射が保険適用となっています。

ゾレア皮下注の使い方は?

 使用上の注意点

・注射部位の痛みを軽減するために投与15~30分前に冷蔵庫から取り出し室温に戻しておく必要がありますが、室温に戻した後サイド2~8℃で保管して使用することができません。

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・天然ゴムアレルギーがある場合は注意が必要です。

・1回につき1.0mL(150mg)を超えて投与する場合には、部位をわけて投与する必要があります。

投与間隔

気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎については、2又は4週間毎と設定されていますが、慢性蕁麻疹については4週間毎となっています。用量設定のための臨床試験の結果が考慮されていますが、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎患者ともに、患者群のPK/PDに差がなかったことから同様となっています(2週間毎の場合は4週間毎の半量を投与)。

投与量

気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎については、「体重」と「投与前の血清中総IgE濃度」をもとにした『投与量換算表』を用いて投与量を決定しますが、表に該当しない場合には投与の対象外となります。また、投与期間中に体重が大幅に変動した場合には、その都度換算表を用いて投与量の再設定を行う必要がありますが、用いるIgE濃度については投与前のものとされています。

慢性蕁麻疹においても、「体重」と「投与前の血清中総IgE濃度」をもとにした投与量による臨床試験を行っていますが、固定用
量に比べて有効性のばらつきを臨床的に意味のある程度には改善(減少)しなかったとの理由から固定用量が選択されています。固定用量について、150mgと300mgで試験が実施されていますが、300mg の有効性は 150mg よりも高く、かつ確実であると考えられたため、300mgが臨床用量として設定されています

投与期間

漫然投与の目安が示されています。気管支喘息は12~16週間後に最大の効果が認められたことから16週間と設定されています。季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹については、12週以降の有効性及び安全性に関する成績は得られていないことから12週間とされています。

効果発現時期

治療上有効な血中濃度は該当資料なしとなっていますが、反復投与時の「血清中オマリズマブ(ゾレア®)濃度の推移」と国内第Ⅲ相成人検証試験における「ピークフローメーターで測定した朝のピークフロー(PEF)の最終評価時のベースラインからの平均変化量」の推移がある程度相関していることから血中濃度との関連もありそうです。

投与期間内(16週間以内)で定常状態に達すると言われています。

使用開始早期の1~2週目から症状の改善が認められていますが、1~2ヶ月後のほうがより改善が認められています。

ゾレア注の副作用は?

頻度が高く認められるものは、注射部位の紅斑、腫脹、そう痒感、疼痛といった局所的なものがほとんどですが、RMP(リスク管理計画書)に記載され継続的なモニタリングが推奨されているものとしては以下のようなものがあります。

■アナフィラキシー
■悪性腫瘍
■血小板減少症
■自己免疫疾患
■寄生虫感染
■好酸球増多症

市販後の調査では以下のような副作用症例数となっています。

全体を通してみると副作用の発現率はそれほど高くはなく、比較的安全に使用できる薬剤である印象があります。

まとめ

難治性患者に対しては有用性・安全性ともに高い薬剤のように感じましたが、やはり価格がネックとなってきます。

今後、薬価改定にともない薬価が下がっていけば使用頻度もあがってくるのかもしれません。

今の所、生活保護を受けている方からしか「使用している」という声を聞いたことがありません。

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