片頭痛の治療!薬剤師&患者が伝えたい薬のこと

2021年9月15日

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片頭痛についておさえておきたいことを網羅的にまとめています。自身が片頭痛もちという方も、片頭痛診療に関わっている方にも読んで欲しい内容となっています。

片頭痛にはどんな種類がある?

片頭痛には疾患が潜んでいる危険な二次性頭痛と、それ以外の一次性頭痛があります。二次性頭痛を見逃さずに頭痛患者のQOLを改善することが大切です。

一般的に片頭痛と言われるのは一次性頭痛ですが、主要なものとして以下の3種類があります。この分類で完全に分類できるものではなく、症状が混在している場合も近年多くみられるようです。

片頭痛
緊張型頭痛
群発頭痛

基本的には、「予兆」→「前兆」→「頭痛発作」→「後発症状(異常残存)」→「発作間欠期」のサイクルを繰り返します。

診断や治療には、ICHD-3(国際頭痛分類)や「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」が用いられます。

片頭痛のメカニズムは?

完全には解明されていませんが、以下のようなものが考えられています。様々な要因が絡み合って起こっているので説が沢山あるのかもしれません。

血管説
頭部の血管が異常拡張して頭痛が生じる
下行性疼痛抑制系の機能不全
イオンチャネル機能異常
三叉神経血管説
三叉神経終末(C繊維、Aδ繊維)が刺激を受けるとCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やサブスタンスPなどの神経ペプチドを放出し、局所的な炎症が生じその拡大により片頭痛が生じる
アロディニア(通常は痛みと感知されない触覚刺激などが痛みとして感知される現象)が、三叉神経にとどまらず頭蓋外にも認められることがある。

片頭痛 予防薬

片頭痛予防に使用される薬剤は沢山ありますが、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」の中で一覧表としてまとめられています。大雑把に分類すると、Ca拮抗薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、β遮断薬が薬効群として挙げられます。

血管拡張を抑えたり、興奮した神経を抑えたり、下行性疼痛を抑えたりする作用機序などで大半の予防薬の説明がつきます。

【予防治療の適応】
・急性期治療を行っても、頭痛発作が日常生活を著しく妨害している
・頭痛発作が高頻度(月間頭痛日数が4日以上)
・急性期治療薬が禁忌、無効または乱用

米国頭痛学会が2019年に出した基本方針表明(ポジションステートメント)の予防治療のための患者選択基準では、生活支障度がない頭痛であっても、月6日以上の頭痛は予防薬の使用が推奨されています。

過去にどんな片頭痛予防薬を使用してきたか?

ちなみに私は過去に、ロメリジン(Group2)、クロナゼパム(Group5)、アミトリプチリン(Group1)、バルプロ酸(Group1)、プロプラノール(Group1)、カンデサルタン(Group2)を服用したことがあります。ロメリジンは副作用も少ないですが、効果は実感できませんでした。クロナゼパムやアミトリプチリンは夜間睡眠がしっかりとれて良かったですが、昼間の頭痛に対してはそこまで効果を感じることができませんでした。

現在、それ以外の比較的エビデンスレベルの高い薬剤(カンデサルタン、プロプラノロール、バルプロ酸)に加えて、抗CGRP抗体であるガルカネズマブ(エムガルティ)を使用しています。

エムガルティの使用体験記はNoteに記載しているので、お時間のある方はこちらもご覧ください。

 「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」の中で一覧表としてまとめられているものを上に示していますが、これらすべてに保険診療上の適応がある訳ではなく、【適応があるもの】は、ロメリジン、プロプラノロール、バルプロ酸【適応外使用が認められているもの】アミトリプチリン、ベラパミルとなっています。実は保険診療で使用できる予防薬は非常に少ないのが現状です。

片頭痛予防薬を使用するうえで大切なこと

予防薬はどの薬剤も臨床効果を達成するまでに2~3か月を要し、通常効果がみられた場合でも副作用がなければ3~6か月は継続するとされています。

このことから考えても、予防薬はその効果を十分に発揮するために、『コンプライアンス』の維持が大切になってきます。

しかし、服薬指導をしていて片頭痛予防薬の『服薬順守率』はそれほど高くないのでは?と感じることが多いです。

片頭痛予防薬1~4剤服用している患者のアドヒアランスはそれぞれ、73.7%、71.8%、82.6%、86.3%で良好なコンプライアンスであったとの報告¹⁾があったり、片頭痛予防薬の種類毎にMPR(medication possession ratios)を用いてアドヒアランスを求めたところ抗うつ薬で0.48、抗てんかん薬で0.51、ベータ遮断薬で0.51であった²⁾。(MPR0.8以上でコンプライアンス良好)といった報告もあります。

様々な報告がありますが、服薬順守率が低下する理由としては、「副作用への懸念効果の実感が得られない」などが考えられます。

 

効果については、「頭痛ダイアリー」を共有ツールとして用いて効果を確認しながら治療を進めることが大切です。

頭痛ダイアリーは、国際頭痛分類、ガイドラインに加えて頭痛診療では欠かせない存在です。ダイアリーをつけることを習慣づけるのはかなり大変な努力になります。その努力を評価し、患者と情報を共有し必ず何かしら一言(具体的にダイアリーの内容をみながら一言)伝えてあげることが大切です。

副作用については、あらかじめ代表的な薬剤の副作用を把握しておき、自己減量や中断に至らないようにこまめな患者フォローを行っていくことが大切です。日常生活動作(ADL)に影響を及ぼすものとしては、「傾眠」「便秘」「口喝」「ふらつき」といったものが代表的ではないでしょうか。

また、そもそも予防薬を使用していない人に対しては、薬物乱用頭痛の情報提供を行うことも大切です。月10回以上を超えると逆に頭痛が起きやすくなることは是非伝えて頂きたいことの一つです。

予防薬の効果を高めるためには、片頭痛で見られる”プラセボ効果”もうまく利用していきましょう。具体的な数字(何回から何回に減る)を示したり、過去の成功事例を話しの中で共有することも有効です。

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また予防薬の使用に際して、予防薬同士の相互作用、予防薬と治療薬の相互作用にも注意が必要になります。予防薬であるプロプラノロールはMAO-Aを競合的に阻害しリザトリプタンの血中濃度を上昇させるため、併用禁忌となっています。また、トピラマートによりアミトリプチリンの血中濃度が上昇してしまうこともあるため注意が必要です。

患者満足度を高めるには?

予防薬も含めてになると思いますが、片頭痛患者の患者満足度は必ずしも高くはないという報告もあります⁴⁾。その中で【通院をやめた理由】として挙げられているのは、「自分の頭痛は致命的ではないと言われたから」「医師から頭痛に関する適切なアドバイスが得られなかった」「医師に診てもらう時間がなかった」「過去に医師に診てもらったときに頭痛薬を出してもらえなかった」などがあります。

片頭痛患者さんは、自分の頭痛を理解して欲しい、共感して欲しいという思いが少なからずあるため、『患者に寄り添った共感的加療』を行っていくことも大切です。

また、患者は診察室で生活の支障(日常生活の支障の指標:MIDAS)をなかなか語らないものですが、医師からの積極的な日常生活への影響の問診が患者満足度向上につながるともいわれています⁵⁾。服薬指導の際にも、生活にどのように頭痛が影響しているかを確認することが大切です。

CGRP関連薬とは?

 近年、新たな片頭痛予防薬として「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」に関連した薬剤が次々と発売されています。片頭痛の病態でCGRPが重要と考えられるようになり、抗CGRP抗体としてガルカネズマブ(エムガルティ)、フレマネズマブ(アジョビ)、抗CGRP受容体抗体としてエレヌマブ(アイモビーグ)などが順次承認、発売されています。

2021年9月現在未承認ですが、経口薬であるCGRP受容体拮抗薬であるgepant(ゲパント)系薬もいずれ発売になっていくでしょう。

CGRP関連薬の間での比較試験は実施されていないため、その効果については比較できませんが各薬剤プラセボとの比較試験で有意な改善効果を示しています(主に、50%反応率〔頭痛の回数が半分に減った人の割合〕やMMD〔月あたりの片頭痛日数〕で比較されているものが多い)。

■EVOLVE-2試験(海外11か国で実施)
ガルカネズマブ120mg:プラセボ
-4.3日:-2.3日(MMD)
59%:36%(50%反応率)

■CGAN試験(日本人を対象として実施)
ガルカネズマブ120mg:プラセボ
-3.6日:-0.6日(MMD)
50%:20%(50%反応率)

上記はガルカネズマブ(エムガルティ)についてですが、アジョビ、アイモビーグなども「HALO EM試験」「HALO CM試験」「STRIVE試験」といった試験で有用性が確認されています。

各薬剤の特徴を簡単にお話しすると、薬価はどれも高薬価となり3割負担の場合13,000円/月前後となります。エムガルティは初回ローディング(2本投与)が必要なので、初回倍の負担額がかかりますが、最初からしっかり効かすため効果発現が早いともいわれています。アジョビは3か月に1回の投与も1か月に1回の投与も可能ですが、3か月の場合は3本打たなくてはならないので負担額としては変わりないですね。アイモビーグは、CGRPが結合する受容体自体を抑えるため他の薬剤とはまた違った位置づけとなってくると思います。

片頭痛治療薬

片頭痛の急性期治療薬としては、やはりNSAIDsやトリプタン製剤が主流となってきます。

トリプタンは現在こちらの5製剤が市場されています。NSAIDsはあまり意識したことはないかもしれませんが、実際に『頭痛』の適応があるのは、アセトアミノフェン、アスピリン、メフェナム酸のみとなっています。インドメタシン、ジクロフェナクNa、ロキソプロフェンNaは適応がないものの保険診療上使用が認められている品目となります。

その他、日本イーライリリー、第一三共が2021年8月30日販売提携を締結した5HT1F受容体アゴニストditan系薬である「ラスミディタン」が今後期待される急性期治療薬として挙げられます。ditan系薬は血管収縮作用をもたないため心血管・脳血管疾患の既往のある患者でも使用が可能となっています。

トリプタン製剤も有用性がとても高い薬剤ですが、その使用方法を間違うと十分な効果が得られない場合があります。十分な効果を発揮してもらうために、トリプタン製剤の特徴をしっかり頭の中で整理しておきましょう。

トリプタン.pdf

薬物動態で比較

薬物動態で比較すると「ナラトリプタン」がもっとも半減期が長く、唯一投与間隔が4時間設定となっています。古い薬剤である「スマトリプタン」「ゾルミトリプタン」は1日最大用量が通常量の4倍まで投与が可能となっています。逆に新しい薬剤である「リザトリプタン」「ナラトリプタン」は1回最大量の倍量処方がありません。

立ち上がりに関してはTmaxにそれほど違いがないように見えますが、一般的にはリザトリプタンの立ち上がりが最も早いと言われています。

こういった薬剤の特徴を覚えておくことで、処方監査、服薬指導時に役立つこともあります。

食事の影響

臨床上食事の影響を受けにくいとされているのは、「ゾルミトリプタン」「リザトリプタン」「ナラトリプタン」ですが、全く受けないというのは「ナラトリプタン」だけかもしれません。

食事によりTmaxが遅延することは効果発現の遅れを意味するため、食事の影響は常に意識しておきたい部分です。

肝機能障害、腎機能障害

肝機能障害について、重度肝機能障害患者で禁忌ではない薬剤は「ゾルミトリプタン」のみですが、AUCやCmaxの増大は認めれることからすべての薬剤で肝機能障害時には注意が必要と考えています。

腎機能障害時に注意が必要な薬剤は、新しい薬剤の「リザトリプタン」「ナラトリプタン」が挙げられます。

相互作用

代謝酵素の影響を受けない薬剤は「ナラトリプタン」のみで、他はMAO-A阻害薬やCYPの影響(ゾルミトリプタンはCYP1A2、エレトリプタンはCYP3A4)を受けます。

エレトリプタンのCYP3A4基質寄与率は0.85と比較的高いため、阻害薬、誘導薬との併用の際には注意が必要です。

リザトリプタンとプラプラノロールが併用禁忌であることは前段で話しましたが、機序から考えると「スマトリプタン」「ゾルミトリプタン」「エレトリプタン」も注意が必要と考えられますが、実際の体内動態をみた試験ではどの薬剤も影響が認められなかったとされています。

1)Dozza AL, Krymchantowski AV. Adherence to migraine treatment does not depend on the number of prescribed medications. Arq Neuropsiquiatr. 2013 Mar;71(3):171-3. PMID: 23563717.
2)Berger A, Bloudek LM, Varon SF, Oster G. Adherence with migraine prophylaxis in clinical practice. Pain Pract. 2012 Sep;12(7):541-9. PMID: 22300068.
3)Lewis DW,et al:The placebo responder rate in children and adolescents.Headache,45:232-239,2005
4)Suzuki N, et al. Prevalence and characteristics of headaches in a socially active population working in the Tokyo metropolitan area -surveillance by an industrial health consortium. Intern Med,53(7):683-9,2014
5)長谷川万希子,五十嵐久佳.片頭痛診療に対する患者満足度の実態:診断と治療 2004;92:2105-2112

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