下痢止め(ロペラミド)の乱用の問題点
「researcher」で日々更新されてくる文献をみている時に、こちらのような文献が目に入ってきました。
文献
(ロペラミドの乱用に関する薬剤師の意識と乱用が疑われる場合の販売制限能力に関する全国的な評価)
ここで、ロペラミド乱用?過去に注意喚起もされているし「麻痺性イレウス」のことかな?と最初思いました。
(「麻痺性イレウス」重篤副作用疾患別対応マニュアル)
アブストラクトしか見れませんでしたが、以下のような内容が書かれていました。
アブストラクト
【導入部分】
ロペラミドで多幸感なんて得られたっけ?と思って得意のGoogle先生に聞いてみました。
「 ロペラミド 多幸感 」で検索
するとトップから2番目にこのケアネットの記事がでてきました。
この記事によると、2010年~2016年にかけてロペラミドの中毒量使用例が増加し、通常量(8mgまで)では多幸感は得られませんが、かなりの量(2mgの錠剤を50~100錠服用)を服用すると薬剤が血液脳関門を通過し高揚した状態になると書かれています。これらの中毒量使用例はオピオイド系薬の離脱症状に対する自己治療として使用している可能性が高いですが、不整脈を含む致死的心有害事象(QT延長・Torsades de Pointes・心室性不整脈・意識消失・心不全)が誘発され得るという警告の文章となっています。
(この記事が引用している文献:Lee, Vincent R., Ariel Vera, Andreia Alexander, Bruce Ruck, Lewis S. Nelson, Paul Wax, Sharan Campleman, Jeffrey Brent, and Diane P. Calello. 2019. “Loperamide Misuse to Avoid Opioid Withdrawal and to Achieve a Euphoric Effect: High Doses and High Risk.” Clinical Toxicology 57 (3): 175–80.)
(画像:https://www.imodium.com/anti-diarrhea-medicine/multi-symptom-relief-caplets)
実際にロペラミドはこのように2mgのタブレット製剤ほか様々な剤形が販売されているため、その販売の制限が実際にきちんと行われているかを調べたものがこちらの文献になると思います。
ちなみに日本において、濫用のおそれがある医薬品としてその販売個数制限がかかっているものは以下のようなものがあります。
【濫用等のおそれのある医薬品】
以下に掲げるもの、その水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤
1.エフェドリン
2.コデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
3.ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
4.ブロムワレリル尿素
5.プソイドエフェドリン
6.メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る。)
ロペラミドは含まれていないですね。そして日本では1mgの製剤しか市販されていません(ロペラミドが市販されていたことさえもこの時まで知りませんでしたが。。。)
e健康ショップで検索すると、指定第2類医薬品としてヒットしてきます。
【目的】
【方法】
【結果】
ロペラミドの乱用について認識している薬剤師は多いものの、薬局でロペラミドの販売規制を行っているところは少なく、薬局以外での購入を防ぐための規制も存在しないため乱用を防ぐのは難しいのではないかという結論になっていると思います。
さいごに
ロペラミドは構造が麻薬に類似していて(フェンタニルと構造が類似している)、オピオイドμ受容体を介して止瀉作用を示すとされています。麻薬にも向精神薬にも指定されていない医薬品ですが、今回のように大量投与では呼吸抑制、不整脈といった中枢性の副作用もみられることがあるため注意が必要です。
また、大量投与でない場合(16mg)でもキニジン(P-糖タンパク質阻害)との併用により呼吸抑制がみられたという報告もあり、血中濃度依存的ではないものの脳内ロペラミド濃度の上昇が起こったためと考えられ、通常量であっても併用する薬剤によっては中枢性の副作用に注意が必要となります。