オピオイドの知識をアップデート!【オピオイドの併用あり?なし?】

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麻薬性鎮痛薬であるオピオイド鎮痛薬。

昔は、

■テープ剤は3日に1回の貼り替えのものしかなかった
■オキシコドン錠を使っているのに、レスキューはモルヒネを使わなくてはいけない
■フェンタニルのテープを使っているのに、レスキューはオキシコドンを使わなくてはいけない

など色々不便な部分もありましたが、年数を重ねる毎に便利な剤形が増えてきて、がん疼痛緩和においては選択肢の幅が広がっています。

緩和の知識が一昔前で止まっているわたしのところに、ある処方がやってきました。

オピオイド鎮痛薬の併用処方

オキシコドン錠10mg 2T/2×
オキシコドン錠5mg 2T/2× で服用中

追加薬として、

フェンタニル1日用テープ1mg 1枚/日

患者さんは両剤使用することについての医師からの説明を十分理解できておらず、最終的には疑義照会を行い両剤併用で問題ないことを確認しています。

その後、効果不十分のため増量

オキシコドン錠10mg 3T/3×
オキシコドン錠5mg 3T/3×
フェンタニル1日用テープ1mg 1枚/日

十分な鎮痛効果が得られていないにもかかわらず、便秘、呼吸苦など副作用の兆候がみられていたためオピオイドの追加や用法の変更がされています。

オピオイド鎮痛薬の併用はありなのか?

オピオイドスイッチングは、効果が頭打ちになったり、あるオピオイドで副作用が懸念され増量できない場合などには効果的であるとされています。

昔はオピオイドローテーションと言っていたと思うんですが、これっていつからオピオイドスイッチングになったんですかね?

まあ、それはいいとして

日本緩和医療学会編集の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版』の中では、オピオイドローテーション(オピオイドスイッチング)について記載されており、「あるオピオイドで適切な鎮痛効果が得られない場合には、他のオピオイドに変更することを推奨する」とされています。

あわせてオピオイド鎮痛薬の併用についての記載もありました。

オピオイドが投与されても十分な鎮痛効果が得られないとき

突出痛(定期的に鎮痛薬を服用していても出てくる間欠的な痛み)に対してはオピオイドのレスキュー薬で対応しますが、持続する痛みに対してオピオイド鎮痛薬単剤で効果不十分の場合には、

■非オピオイド鎮痛薬の併用
■オピオイドスイッチング
■投与経路の変更
■鎮痛補助薬の追加

などの他に、他のオピオイドの追加の選択肢が記載されています。
(推奨、エビデンスレベルとしては、2C〔弱い推奨、とても弱いエビデンスレベル〕)

オピオイドの追加

〔1件の系統的レビュー〕
◎無作為化比較試験:
がん患者22名を対象に
モルヒネ徐放製剤のみ vs モルヒネ徐放製剤+オキシコドン徐放製剤併用
併用群ではレスキューの使用回数が少なく、悪心・嘔吐も有意にすくなかったとされています。

◎前後比較試験:
オピオイド増量してもNRSが4以上のがん患者14名を対象に他のオピオイドを追加
・フェンタニル貼付剤に20%の経口モルヒネを追加
⇒痛みのNRS 6.7から2.7に低下
・経口モルヒネにフェンタニル貼付剤追加
⇒痛みのNRS 6.4から3.3に低下
・経口モルヒネに経口メサドンを追加
⇒痛みのNRS 6.2から3.0に低下

この結果から、

根拠は不十分であるが、あるオピオイドで適切な鎮痛効果が得られない患者において、他のオピオイドを追加することは、痛みを緩和する可能性がある。

あるオピオイドで適切な鎮痛効果が得られない患者において、専門家に相談したうえで他のオピオイドを追加することを推奨する

としています。

治療薬の選択のフローチャートも掲載しておきます。

ここまでが、2014年版のがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの内容で、2020年版では若干内容が異なっている部分があります。

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版では何が変わってる?

2020年版では、そもそもオピオイドの追加投与の記載がなくなっています

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これは、オピオイドを2剤併用することで、鎮痛効果を高める、有害作用を軽減する、内服する薬剤を減らす目的があるという意見があったものの、臨床疑問(CQ)に含められなかったため、推奨の議論自体行われていません。

また、用語についても検討されており、2014年版では、オピオイドの変更を、オピオイドスイッチングと表記していましたが、用語を統一するよりも判読のしやすさを重視して、「オピオイドの変更」と表記されています。

他のがん疼痛に関するガイドラインでは、オピオイドスイッチング、オピオイドローテーションの用語が並列で記載されています。

オピオイド併用のその他文献

症例報告レベルでは、その有効性に関する文献がいくつかあります。

単純に追加して効果のあったものや、部分的オピオイドローテーション(元のオピオイドを減量+別のオピオイドを追加)で効果のあったものの2パターンになります。

オピオイドの追加

1年間の間に、癌性疼痛にフェンタニルパッチ(FP)を使用した54 症例のうち疼痛が残存し、FPとモルヒネ持続静注(MI)の併用治療に切り替えた7症例を対象として実施。

平均投与量(併用前後)
FP 16.2mg/日→16.2mg/日
MI   0  → 27.1mg/日

VAS値では67.0±16.7から31.0±17.3と有意な低下(p<0.05)が認められた。

P1-278 癌性疼痛に対するオピオイドの多剤併用効果 : フェンタニルパッチとモルヒネ注併用による臨床的検討.日本医療薬学会年会講演要旨集,19:339,2009

部分的オピオイドローテーション

1)デュロテップMTパッチ減量、モルヒネ注射液追加

嘔気のため内服困難で、デュロテップパッチ25.2mg/72hrでコントロールされていた方。
寝たきりの状態だったが、娘の結婚式を控え外泊希望されていた。
フェンタニルの増量では臨床的な天井効果や耐性から十分な鎮痛効果が得られないと判断して、モルヒネ注射液追加の部分的オピオイドローテ―ションに踏み切っている。

デュロテップパッチ25.2mg/72hr→16.8mg/72hr
モルヒネ注射液 2.4mg/hr→不十分のため増量3.6mg/hr
(CADD Legacy PCAポンプ使用)

疼痛コントロール良好となり、娘の結婚式に参加できています。

緩和ケアチームによる部分的オピオイドローテーションで疼痛コントロールが良好となり, 娘の結婚式に参加することができた1事例.日農医誌,60(6):764-769,2012

2)デュロテップMTパッチ減量、MSコンチン追加

フェンタニルパッチ75μg/hr(7.5mg/3日間)で良好な鎮痛コントロールが維持されていた方。

疼痛も悪化し徐々に薬剤を増量しフェンタニルパッチを300μg/hr(30mg/3日間)まで増量しても鎮痛が達成できず、神経過興奮の副作用が出現。

部分的オピオイドローテーション実施。

フェンタニルパッチ300μg/hr(30mg/3日間)→150μg/hr(15mg/3日間)
硫酸モルヒネ徐放剤360mg/日追加

十分な鎮痛が得られています。

経皮吸収型フェンタニル貼付剤と硫酸モルヒネ徐放剤を併用し鎮痛が得られた癌性疼痛の1例.癌と化学療法,32(12):1997 – 2000,2005

オキシコドンの1日3回投与

補足的な部分になってきますが、今回オキシコドン錠は併用前1日2回の投与でしたが、併用後の増量時には1日3回の用法へ変更となっていました。

鎮痛効果や副作用軽減を目的として臨床現場では1日3回8時間毎の投与がみられるものの検討された報告はほとんどありません。

一部1日2回群と1日3回群で比較検討されている学会発表があったので紹介しておきます。

オキシコドン徐放錠の1日投与回数の違いによる副作用への影響に関する研究.第23回日本医療薬学会年会,23:322,2013

オキシコドン投与量
2回群(n ≡287): 30mg/日
3回群(n=105)90mg/日

3回群は2回群よりも1日投与量が高用量でした。
下剤、制吐剤の使用薬剤数は3回群の方が少ないにも関わらず、便秘、嘔気の症状スコア、排便回数は同等であったとされています。

2回群と比較して3回群では血中濃度推移の変動が小さく、最高血中濃度付近における副作用の発現頻度が少なくなる可能性があると締めくくられています。

まとめ

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版では、オピオイドが投与されても十分な鎮痛効果が得られないとき、他のオピオイドの追加の選択肢が記載されていますので、選択肢の一つとしては考えられますが、エビデンスレベルとしては、2C〔弱い推奨、とても弱いエビデンスレベル〕と低いレベルとなっています。

そう考えると、積極的には使用できないものの、他の選択肢がない場合には試してみる価値がある治療法なのかなと思います。

今回の症例については、ベースの減量なしに処方薬の追加であったこと、追加後も追加薬の増量ではなくベース薬の増量であったこと等いくつか異なる点はありますが、副作用の増強なく痛みの軽減が得られていました。

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