トラムセット、吐き気止めをやめる時間(とき)はいつ?【根拠を探す】

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トラムセットの吐き気に対してメトクロプラミド

トラムセットとメトクロプラミド(プリンペラン®)は服用開始時に併用されることが多い組み合わせだと思います。

皆さんも知っているように、吐き気、眠気、便秘の3大徴候が出やすく、耐性がつかない便秘以外は、対症的に症状にあわせて薬を服用する必要があるからです。

ではいつまでこの組み合わせで服用したらいいのか?

たまに、

トラムセット 4錠 1日4回
メトクロプラミド 4錠 1日4回

 

TOMO@北の薬屋®
TOMO@北の薬屋®
この処方が延々と処方され続けているものをみることがないでしょうか?

一般的に、D2受容体遮断薬は錐体外路症状のリスクがあるため、必要最小限の投与にとどめることとされているため、本来であれば疑義照会やトレーシングレポートなどでメトクロプラミドの中止を促したいところです。

吐き気止めはいつまで?

「眠気は数日、吐き気は1週間以内に慣れが出てくるので、少し我慢してください。便秘だけは最後に残ってしまいますので、水分を多めにとったり便秘薬で対処していきましょう。」

こう患者さんに説明することがあります。

しかし、この1週間程度というのは受け売りで、なにか自分の中で根拠があって伝えていたものでもありませんでした。

TOMO@北の薬屋®
TOMO@北の薬屋®
どうせなら、自分の中で根拠をもって7日目以降のメトクロプラミドの併用は必要ないと言いたい!

インターネットで検索すると、『3日~7日で耐性が生じる』と記載されている記事も散見されますが、元文献(根拠となる参考資料)の記載がないため、それがどこからきている情報なのかはっきりとわかりません。

⇒トラマドールによる悪心・嘔吐の副作用は服用開始後3〜7日で耐性ができて、軽減することが多いため、通常は1〜2週間後には制吐薬はストップされる傾向にあります。(文中より抜粋)

⇒吐き気・嘔吐は投与初期あるいは増量時に起こることが多く、数日以内に耐性を生じる。患者指導箋では1~2週間となっていたが、一般的には3~7日程度で耐性が形成され、吐き気止めは不要となることが多い。(文中より抜粋)

この2つのサイトです。

日本ペインクリニック学会の
非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドラインの中でも

このように、3~7日後には耐性形成と書かれています。

これらをあわせて考えると、やはり「3~7日で耐性ができて、吐き気止めは不要になる」となります。

根拠となる資料を探してみる

この根拠となる資料を探してみようと思いまずPubmed検索行いました。

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トラマドール(T)単独群とトラマドール+メトクロプラミド(T+M)併用群の比較

Pang WW, Wu HS, Lin CH, Chang DP, Huang MH. Metoclopramide decreases emesis but increases sedation in tramadol patient-controlled analgesia. Can J Anaesth. 2002 Dec;49(10):1029-33. doi: 10.1007/BF03017896. PMID: 12477672.

ひとつヒットしてきたのがこれです。

術後鎮痛薬としてトラマドールを使用しています。トラマドールにメトクロプラミドを追加することの臨床的な利点と欠点を評価することを目的として行っています。

この文献の中ではトラマドール(T)単独群とトラマドール+メトクロプラミド(T+M)併用群で比較されています。

術後48時間まで吐き気のスコアを比較したものでは、T+M群よりもT群の方が術後12時間から24時間までの悪心・嘔吐が多くなっており、30時間以降では若干T群の方が多くなっていますが有意差はついていません。

また別の表で、術後1日目の悪心・嘔吐の発生率もT群の方がT+M群より高くなっています。

この資料をみる限りだと、服用開始1日目までは悪心・嘔吐が高頻度で認められていますが、2日目以降その発現頻度に有意差がなくなってきており、3日目以降になるとほぼ変わらない状態になっているのかもしれないと予想はできます。

これもひとつの根拠としての目安にはなるんでしょうか。

ほかにいい文献もみつからず延々と探していると、ひとつ抜歯後の鎮痛にトラムセット配合錠を用いた文献がありました。

抜歯後の鎮痛にトラムセット配合錠

使用成績調査報告になります。

トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠の安全性プロファイル:
抜歯後痛患者を対象とした使用成績調査報告より.歯科薬物療法,34(3):132-141,2015

この資料の中では、吐き気止めも使用してもしなくても、差は認められていません。

そのほかに、悪心・嘔吐について患者背景の影響を検討するために多変量ロジスティック回帰分析を実施しています。

結果、性別(p=0.013)、BMI(p=0.019)が独立したリスク因子として検出されており、それぞれのオッズ比は性別で2.29(男性に対し女性)、1.13(BMIが1kg/m2低下ごと)となっています。

すなわち、やせ型の女性では、悪心・嘔吐の副作用が起こりやすい可能性があるということになります。

これは知らなかったです。

さいごに

根拠となるものもはっきりみつけることはできませんでしたが、ここまでの内容をまとめると、

✔ 3日目以降は吐き気の副作用はでにくくなる

✔ 女性ややせ型の人では吐き気の副作用が出やすい可能性があるので、吐き気止めを中止する場合には注意深く観察する必要がある。

こんな感じだと思います。

せっかく今回調べたので、今後は、トラマドールとメトクロプラミドの長期併用例をみたら、患者さんと相談しつつも自信をもって吐き気止め中止の方向にもっていきたいと思います。

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