便秘のときの浣腸【覚えておきたい2つのチェックポイントと5つの使い方】
便秘と浣腸
グリセリン浣腸の使い方の説明をするときには、製薬企業より提供されている説明書を用いて行っていました。
今回なぜこのブログを書こうと思ったのか?というときっかけはこれ
このなかで、【薬物治療】浣腸・坐薬の使い方と注意点という特集があってそれを読んだことでした¹⁾。
便秘のときの浣腸の使い方【説明書】
いつも使っている説明書はこちら
画像小さいですが、クリックすると大きくなると思います。この中で「どうなんだろう?」と思ったのは
1.挿入する深さ
2.浣腸から排便までの時間
主にこの2つのポイントです。
1.浣腸を挿入する深さ
説明書の中では
チューブ目盛り(3,6,10cm)を目安にして、ストッパーをスライドさせ挿入する深さに合わせます。
●成人の場合:6~10cm
●小児の場合:3~6cm
●乳児の場合:3~4cm
書籍の中では
「浣腸のストッパーを先端から5cmの位置に合わせ、ノズル先端に潤滑ゼリーを十分に付ける」
こう書いてあります。
文中にいくつかストッパーの位置についての記載がでてきますが、やはり穿孔予防のためにもノズル挿入を5cmまでという文言が繰り返しでてきます。
「6~10cm」と「5cm」だとそう遠くない数値のような気がしますが、5cmと10cmだとだいぶ違います。
製品は
ここで製品を見てみましょう!
少し目盛りのところを拡大してみてみると
見ずらいですが、ストッパーの初期位置は8cmくらいのところにあります。
これが標準の位置だと思っていて、特に根拠もなくそのまま使うことをすすめてしまっていました。
根拠となるもの
挿入する際の体の向きについては、通常解剖学的な観点から、右側臥位で浣腸を行ってはいけないと教育されているようですが、5cmの位置であれば右側臥位でも問題ないという考えも記載されています。
しかし、説明書にもあるように特に左でできない理由がない場合以外は「左側臥位」で挿入した方がいいでしょうね。
グリセリン浣腸による損傷部位や有害事象について検討された報告²⁾もありますが、有害事象のあった事例のうち,カテーテル挿入の長さは5.1~5.5 cmが10件で最も多く、5 cm以上の挿入は避けるべきであり、4.1~4.5 cmとすることが望ましいと考えられると締めくくられています。
また、2012年10月のPMDA医療安全情報でも「グリセリン浣腸の取り扱い時の注意について」が掲載されています。
その他気になること
「ノズル先端に潤滑ゼリーを十分に付ける」という記載もありますが、潤滑ゼリーを使ってと言われてくる人がいないですし、潤滑剤が一緒に処方されてくる人もいません。
添付文書には、「オリブ油、ワセリン等の潤滑剤を塗布」という記載があるので、本来ならどちらかを一緒に処方してくれるといいのかもしれません。
☑ ストッパーの位置は5cmにあわせて行うように指導する
☑ 基本は、左側臥位で行う。
どうしても無理ならカテーテル挿入の長さ5cm以内で右でも可
☑ ワセリンなど潤滑剤を塗布して使用する
2.浣腸から排便までの時間
説明書の中では
ストッパーを片方の手で固定し、浣腸液をゆっくり注入します。
注入後、チューブを静かに抜き、肛門部を脱脂綿等で押さえて、
3~10分後、便意が強まってから排便すると効果的です。
書籍の中では
「便秘が高まったら排便する。通常は1~3分程度で十分である。」
こう書いてあります。
また迷走神経反射による血圧低下などを防ぐためにも、浣腸の後、「○分以上我慢してください」の指示をしない。
待機時間が長すぎるので、十分な便意が高まったら、時間にかかわらず排便してもらうという記載もあります。
また、説明書の記載では「ゆっくり」とだけ書いていますが、これも具体的に「15~60秒かけて注入する」と記載されています。
具体的な数字で示すことで理解力が増すような気がします。
実際の説明のとき、3~10分は長すぎるので、可能な範囲でとどめて排便するように説明していました。
これからはより具体的な説明ができそうです。
☑ ○分以上我慢してくだいとは言わず、通常1~3分で便意が高まったら排便と伝える
☑ 60mL1本を15~60秒ほどゆっくり時間をかけて注入する
便秘と浣腸のまとめ
普段あまり意識して確認していないことも、知らないと恐ろしいことがあるということを感じました。
何となく説明書に頼るのをやめて、説明書にかかれている意味・理由もしっかり考えていかないといけないと考えさせられた例となりました。
1)佐々木巌,佐々木みのり,増田芳夫,浣腸・坐薬の使い方と注意点.medicina:57(9),1501-1507,2020
2)愛栗田, 好恵佐藤, 惠美子篠崎, 隆中野, and 徹也藤井. 2010. “グリセリン浣腸による損傷部位や有害事象についての文献検討.” 日本看護技術学会誌 9 (2): 67–73.