骨粗鬆症の治療評価をするのに大切な3つの血液検査
骨粗鬆症の薬が効いているのか、いないのか骨密度で判断することが多いと思います。
あるときの投薬口での出来事を例にして、骨粗鬆症処方についてみていきたいと思います。
骨粗鬆症の治療症例
前回受診時、骨密度の測定があり上記薬剤が追加となっていた方です。
今回、エディロールカプセル0.75μgが中止となっていたため、Ca値が高めだったのかなと思い検査表をみせてもらいました。
Ca値は 9.8mg/dLで正常範囲内、血清Crは、0.81(eGFR=52.5mL/min/1.73m2)となっていました。
その他の項目として以下のようなものもありました。
25OHビタミンD/ECLIA
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29.5
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TRACP-5b
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281
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total P1NP
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40.9
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基準値:
25OHビタミンD/ECLIA
ビタミンD欠乏 20.0未満、ビタミンD不足 20.0~29.9(ng/mL)
TRACP-5b
M:170~590、F(YAM) : 120~420 mU/dL
total P1NP
M(30~83歳):18.1~74.1、F(閉経前):16.8~70.1、(閉経後):26.4~98.2ng/mL
恥ずかしながら、骨粗鬆症治療薬を服用されている人には定期的(半年~1年に1回)に骨密度の測定の有無は確認していたものの、骨代謝マーカー測定について確認したことは一度もありませんでした。
もともと、整形外科では採血すること自体が珍しいことも一つの原因だったとは思います。
今後のために骨代謝マーカーについて調べておきたいと思います。
骨粗鬆症の治療評価のための骨代謝マーカー
この「骨代謝マーカー」という言葉(ワード)は、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」の中でも74件ヒットしてくるので、その重要性も高いことがうかがえます。
✓ 骨形成マーカー:骨芽細胞に関与
✓ 骨吸収マーカー:破骨細胞に関与
✓ 骨マトリックス関連マーカー:骨質に関与
臨床的に骨粗鬆症と診断された患者の骨代謝状態を評価し、治療薬の選択と治療効果を判定することが目的で、3つの骨代謝マーカーの評価が大切になってきます。
【目的】
1)骨折リスクの評価
2)適切な薬剤選択の評価
3)治療効果の評価
治療効果の評価の際には、基準値ではなく治療開始前からの変化率で評価する。
通常は、治療開始時と治療開始から3~6ヶ月後に行うのが一般的とされています。
(保険点数上の制約として、この2回に限られている)
また、骨形成内、骨吸収内のそれぞれの項目を併用して測定することは認められていません。
骨形成マーカー
・骨型アルカリホスファターゼ(BAP)
・Ⅰ型プロコラーゲンーNープロペプチド(P1NP)
骨吸収マーカー
・デオキシピリジノリン(DPD)
・Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)
・Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTX)
・酒石酸抵抗性酸ホスファターゼー5b(TRACP-5b)
骨マトリックス関連マーカー
・低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)
・ペントシジンおよびホモシステイン
骨代謝マーカー以外の血液検査
今回はこの骨代謝マーカー以外にも、「25OHビタミンD/ECLIA」の測定が行われていましたが、これは体内のビタミンD不足・欠乏状態の評価に用いる検査でした。
近年、ビタミンD製剤の過量投与(特に、高齢者へのエディロール0.75μg投与)による高カルシウム血症からのAKI(急性腎障害)が問題視されていますが、エディロールの投与に際して本当にその量が必要か?また投与後その量は本当に必要だったか?の評価ができればこういった副作用も減らせるのかもしれません。
と勝手に思いました。
整形外科で「25OHビタミンD/ECLIA」の測定がどれくらい行われているかにもよると思いますが。
まとめ
今回はせっかく採血結果をみせてくれましたが、経時的な記録を追ってなかったために、点での採血結果だけでは判断できませんでした。
今後は以下のことに気をつけてみていきたいと思います。
☑ 骨粗鬆症治療薬開始時には採血の有無確認
→骨代謝マーカーの確認
☑ 骨密度は半年~1年くらいの期間で確認
半年くらいまでは採血の有無も確認していく
この2点をしっかり行い、骨粗鬆症治療薬の選択方法や治療効果の確認を意識していくことが大切だと思いました。
【参考資料】
三浦雅一,骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの実践的活用法について.モダンメディア,62(9):8-13,2016
骨密度の結果表の見方についてはこちらの記事で書いています。