抗ヒスタミン薬(かゆみ、花粉症)

2020年4月9日

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抗ヒスタミン薬は、かゆみを抑えたり、アレルギー性の鼻水を抑えたりしてくれる便利な薬ですが、副作用として眠気、だるさ、口の渇きとなどがみられることがあります。

最近の出来事

最近、身体のかゆみに対して下のような処方が出た患者さんがいました。

Rp1)ビラスチン錠20mg(ビラノア錠20mg®) 1錠 分1 就寝前

Rp2)フェキソフェナジン錠60mg 2錠 分2 朝夕食後

Rp3)エバスチン錠10mg 1錠 分1

エバスチン錠が追加で処方された分です。今まで皮膚科の処方で、抗ヒスタミン薬を2種類併用している処方は見てきましたが、3種類併用というのは初めてでした。

「これっていいのか?」

まずはこの感想があたまに浮かび、次に副作用のことが思い浮かびました。

結局は患者さんのかゆみと相談しながら、フェキソフェナジンを削除し2種類とすることで落ち着きましたが、今後のためにも文献検索で3剤併用があるのかどうかを調べてみることにしました。

抗ヒスタミン薬の併用について

まずはJ-Stageで検索

”抗ヒスタミン薬” ”併用”で、1文献ヒットしました。

アゼラスチン (アゼプチン ®) の鼻アレルギーに対する臨床効果および抗ヒスタミン剤併用による増強効果
耳鼻咽喉科展望 1990年 33 巻 Supplement1 号 67-76

思ったよりヒットしなかったなという印象です。

対象:総患者数39名(アゼラスチン単独25名、メキタジン併用14名)

アゼラスチン単独(4週間)とアゼラスチン+メキタジン(アゼラスチン2週、併用2週)の効果を比較
(最後の2週間はアゼラスチン単独)
投与量:アゼラスチン1mg 2T/2× 、 メキタジン3mg 2T/2×

・全般改善度 5段階
・患者の印象 5段階
・安全度(副作用) 4段階
・全般有用度 5段階

で評価

結果:            単独群   併用群
・全般改善度 改善以上    68.0%   71.4%
・患者の印象 良くなった以上 76.0%   64.3%
・全般有用度 有用以上    72.0%   71.4%
いずれも有意差なし
・副作用   臨床的な副作用は単独投与群、併用群とも認められなかった。

他鼻の症状を細かく分類して評価していましたが、最終的な改善度としてはいずれもほとんど差が認められていません。

あえて良い所を挙げるとすれば、アゼラスチン2週間服用で効果が弱かった人に対してメキタジンを併用してその後改善がみられているので、併用効果があったといえばあったのかなという感じです。しかし、ランダム化比較試験とは異なるためその併用効果はあるかもしれないと推察されるという感じかなと思います。

今日の治療指針(医学書院)では

慢性蕁麻疹の治療方針の部分の、抗ヒスタミン薬の項目で、「上記抗ヒスタミン薬にて効果不十分な場合、上記のいずれか1剤を倍量投与または2種類を併用する。 それでも効果不十分な場合には、次の治療ステップとして抗ヒスタミン薬に加えてシングレア、ガスター、トランサミンの治療を追加する」と記載されています。

元文献などの記載がないため、この文章の根拠がわかりませんが、蕁麻疹診療ガイドライン2018の中では以下のような文があります。

経口投与では,効果と副作用の両面で中枢組織移行性が少なく,鎮静性の低い第2世代の抗ヒスタミン薬(非鎮静性抗ヒスタミン薬)が第一選択薬として推奨される.(推奨度 1~2,エビデンスレベル A~C)なお,抗ヒスタミン薬の効果には個人差があり,一種類の抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合でも,他に 1~2 種類の抗ヒスタミン薬に変更,追加,または通常量である程度効果の得られた抗ヒスタミン薬を増量することで効果を期待し得る.
(参考:蕁麻疹診療ガイドライン2018)

おそらくこの文章からの流れで記載があると思います。しかし、このガイドラインの一文の中にも参考文献はつけられておらずその文章の根拠は今一つ不明です。

Pubmedでは

抗ヒスタミン薬の増量と併用

抗ヒスタミンの増量と併用についての文献です。海外文献なのでその用量については体格などの差もあるため参考程度になると思いますが。

Effectiveness and safety of antihistamines up to fourfold or higher in treatment of chronic spontaneous urticaria.
2017 Feb 14;7:4.(PMID 28289538)

慢性蕁麻疹でクリニックを受診した178名に対して、抗ヒスタミン薬の標準用量で治療を行い効果がなかった場合に4倍量の投与を行い、それでも効果がない場合には追加治療を行うというもの。

抗ヒスタミン薬の標準用量(この文献の中では):
レボセチリジン5 mg、デスロラタジン5 mg、フェキソフェナジン180 mg、クレマスチン1 mg、ヒドロキシジン25 mg、セチリジン10 mg、ロラタジン10 mg、アクリバスチン8 mg

標準用量:178例
効果あり 40例(22%)
不十分  138例(78%)

4倍量:138例
効果あり 41例(23%)
不十分  97例(54%)

4倍量以上の治療が必要だった人:97例
このときに、抗ヒスタミン薬の併用療法も組み込まれた

この文献の中では、EAACI/GA(2) LEN/EDF/WAO 蕁麻疹ガイドラインについても触れており、その中では抗ヒスタミン剤の併用を推奨していません。これは、作用機序が類似しており、異なる抗ヒスタミン剤を混合しても理論的には追加の利点がないためという理由になっています。
(The EAACI/GA(2) LEN/EDF/WAO Guideline for the definition, classification, diagnosis, and management of urticaria: the 2013 revision and update.:Allergy. 2014 Jul;69(7):868-87.)

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海外はどちらかというと ”増量” という方向性になっているようです。しかし、この文献の中では高用量(例えば、4倍用量)の2つの抗ヒスタミン薬を組み合わせることにより、難治症例のかゆみを制御できることも示唆されています。


もう一つは、抗ヒスタミン薬の単剤と併用療法で、効果と鎮静の副作用を比較したものです。

Night-time sedating H1 -antihistamine increases daytime somnolence but not treatment efficacy in chronic spontaneous urticaria: a randomized controlled trial.
Br J Dermatol. 2014 Jul;171(1):148-54.(PMID: 24472058)

慢性蕁麻疹患者24名に対して、
レボセチリジン15 mg+ヒドロキシジン50 mg
レボセチリジン20 mg
5日間投与
(先行治療あり)

 

結果は、

UAS(urticaria activity score:そう痒スコア及び膨疹スコアの複合スコア)をいずれの治療も低下させたが、両群間に有意差はなかった。

夜間の睡眠障害と日中の傾眠傾向について、VAS(Visual Analog Scale:視覚的評価スケール)を用いて評価していますが、夜間の睡眠障害については両群間で有意差はなかった。日中の傾眠傾向については、レボセチリジン15 mg+ヒドロキシジン50 mgの併用群で鎮静効果が高かったとされている。これは、ヒドロキシジンの長い半減期も関係しているが、ヒドロキシジン自体の鎮静作用の強さも関係しているのかもしれない。

抗ヒスタミン薬の増量による各薬剤の効果

高用量で効果的なもの

レボセチリジンデスロラタジンともに、5mg~20mgまでの増量で
90%の改善がみられた。(5mg:15%、10~20mg:75%、無反応:10%)
いずれも増量による傾眠の増加は確認されなかった。
(J Allergy Clin Immunol. 2010 Mar;125(3):676-82. PMID 20226302)

レボセチリジン > デスロラタジン  治療への反応性で比較
レボセチリジン(5mg:52%、10mg:65%、20mg:74%)
デスロラタジン(5mg:41%、10mg:56%、20mg:63%)
J Dermatolog Treat. 2017 Sep;28(6):539-543. PMID 27779432)

※ほか、ビラスチンも20mg、40mg、60mgと増量で効果があったという文献もありますが、添付文書上の用法用量を考えると日本における増量は現実的ではないので割愛します。

高用量で効果的だったり、そうではないもの(中間)

セチリジン

セチリジン10mgで服用を開始し、効果不十分例のみ20mgに増量
⇒その後、効果がみられてから、10mg減量群と20mg維持群で比較。改善維持は20mg投与群のみ
(Br J Dermatol. 2007 Oct;157(4):803-4. PMID 17627798)

セチリジン10mgから30mg(10mg×3)に増量しても22名中1名しか改善がみられなかった。
(Clin Exp Dermatol. 2007 Jan;32(1):34-8. PMID 17042777)

増量による効果が弱いもの

フェキソフェナジン

1日2回20 mg、60 mg、120 mg、240 mgの用量でフェキソフェナジンを投与した418人の患者
20mgと他の高用量で有効性に差はみられたが、60mg、120mg、240mgの間では有意差はみられなかった。
(Ann Allergy Asthma Immunol. 2000 May;84(5):517-22. PMID 10831005)

ほか、もう一文献も同じような結果になっていました。
(J Allergy Clin Immunol. 1999 Nov;104(5):1071-8. PMID 10550755 )

構造式から

Noteで「ツカサ」さん(https://note.com/ambitious_ph)からコメントをいただいたのでその内容も加えておきます。併用する場合には、抗ヒスタミン薬の構造式の骨格もその選択に影響することがあるようで、抗ヒスタミン薬の分類をみてみます。

(セルフメディケーション.com:花粉症のお薬が合わないときの対処法より引用)

三環系、ピペリジン骨格、ピペラジン骨格の3つがあり、異なる構造の成分を併用するというものです。
この原理だと、今回のビラスチン、エバスチン、フェキソフェナジンはすべてピペリジン骨格に該当するので完全にアウトですね。

まとめると

1)抗ヒスタミン薬の併用療法に関する文献は少ない
2)日本の蕁麻疹診療ガイドラインの中では抗ヒスタミン薬併用の一文が入っている
3)海外のガイドラインでは抗ヒスタミン剤の増量推奨で併用の推奨度はあまり高くない
4)併用による効果もあることが推察されている

これらを踏まえて、自分なりに考えてみました

抗ヒスタミン薬単剤投与で効果不十分な場合には、まず適宜増減の枠まで増量し、その後抗ヒスタミン薬の併用もしくは、他剤(H2ブロッカーやロイコトリエン拮抗薬)の追加を考慮がベストかなと思います。抗ヒスタミン薬を併用した場合にも2剤とも上限量まで増量したうえで、ほかの治療法を検討するのが妥当と考えるので、3剤併用は普通ではあまり考えられない選択肢ではないだろうかという結論に達しました。事実3剤抗ヒスタミン薬を併用しているという文献を探すことはできませんでした。

今回の場合も、ビラスチン以外は増量が可能なので、フェキソフェナジンあるいはエバスチンを倍量まで増量するのがまずは先決だったのではないでしょうか。増量効果が認められていて構造式も異なる、デスロラタジンやレボセチリジンなどをビラスチンに加えるという方法もあったかもしれません。

抗ヒスタミン薬の眠気防止には、コーヒーを。コーヒーに関する情報も書いています。

カフェインについて

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