カフェインについて
先日、「公認スポーツファーマシストてろはん」さんのYoutube動画を見ているときに、エナジードリンクに含まれるカフェインの量がコーヒーに含まれるカフェインの量と比較してそれほど多くないなと感じ意外でした。
ちなみに、スポーツファーマシストとは、直訳すると”スポーツ 薬剤師”
スポーツの現場におけるドーピング防止のための活動を行う薬剤師です。
ドーピング:運動能力・筋力の向上や神経の興奮などを目的として、薬物を使用したりそれらを隠蔽する行為。
カフェインの話に戻していきますが、私は「朝の元気が出ないとき」や「運動前に元気を出したいとき」などにエナジードリンクに頼ってしまうことがあります。今回は、エナジードリンクを含めた各種飲料品のカフェイン含量とその作用についてみていきたいと思います。
各種飲料品のカフェイン量
近年エナジードリンクの種類は少しずつ増えていますが、エナジードリンクについては私がよく飲む ①Red Bull ②Monster ③サンガリアミラクルエナジーVについてとりあげます。その他、飲料品との比較です。
各種飲料のカフェイン含有量は下のとおりです。
これを100mLあたりの含有量で比較すると
①眠眠打破
②ワンダ金の微糖
③ボス 無糖ブラック
④モンスター エナジー
⑤レッドブル
⑥伊右衛門 濃いめ
⑦伊右衛門
となります。
やはり、缶コーヒーの方がエナジードリンクよりもカフェインの量は多くなっています。朝の少し元気を出したいときには、エナジードリンクではなくて甘い缶コーヒーが一番いいのかもしれません。
次からはこのある意味 ”元気の素” になる【カフェイン】についてまたいつもと違った視点からみていきたいと思います。
カフェインの構造式
カフェインはアルカロイドの一種で、キサンチン誘導体として知られています。キサンチン誘導体と聞くとまず、アミノフィリン、テオフィリンといった喘息治療薬が思い浮かぶと思います。
久しぶりに手書きで構造式書きましたが、こんな感じでメチル基(-CH3)が3つくっついた構造になっています。このメチル基が代謝を受けることで、様々な活性代謝物へ変化していきます。
1.上のメチル基が脱メチル化されると
パラキサンチン(84%):脂質の代謝を促進する
2.左のメチル基が脱メチル化されると
テオブロミン(12%)
:血管径を拡張し、血流量を増加させることで尿量を増加させる
3.右のメチル基が脱メチル化されると
テオフィリン(4%)
:気管支平滑筋の弛緩作用があり、気管支喘息の治療に用いる
カフェインの代謝産物として、ごく微量ですがテオフィリンがあるのは知りませんでした。
カフェインの作用
カフェイン服用による効果はいくつか知られています。
アデノシン受容体(A1、A2A、A2B、A3)に結合して、アデノシン本来の働きを妨げます。
〇利尿作用
:腎臓におけるアデノシンA1受容体の遮断を介する尿細管再吸収抑制
〇中枢興奮作用
〇覚醒作用
〇心拍数の増加などスポンサーリンク
カフェイン自体の動態としては、半減期:3~7時間となっていますが、代謝酵素である【CYP1A2】には遺伝子多形があると言われていて、この半減期には幅がでてきます。
すなわち、効果の持続時間が異なってくるということになります。
一部分の遺伝子配列の違いで、代謝速度は
カフェインに強い AA型 > AC型 > CC型 カフェインに弱い
の順となっています。
AA型は40~48%と半数、AC型とCC型をあわせて52~60%となっていますが、コーヒーの摂取量が多い、セルビア人やオランダ人では、AA型の割合が高いことが報告されているようです。日本におけるコーヒーの消費量はそれほど多くないため、個々人で代謝速度は変わってくるでしょう。
カフェインを夜遅くに飲んでも眠れるよっていう人は、カフェインに対する耐性ができているもしくは、「カフェインに強い人」と言えると思います。
代謝酵素CYP1A2を阻害するもの
カフェインの効果を高めるもの
胃薬:シメチジン
不整脈薬:メキシレチン、プロパフェノン、アミオダロン、ベラパミル、ジルチアゼム
抗血小板薬:チクロピジン
ニューキノロン系抗菌薬:シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、トスフロキサシン、パズフロキサシン、プルリフロキサシン
マクロライド系抗菌薬:エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン
抗真菌薬:フルコナゾール
抗うつ薬:フルボキサミン
嫌酒薬:ジスルフィラム
鉄過剰症薬:デフェラシロクス
コーヒー好きの人が、カフェインの作用を強める可能性のある薬を飲み始めた場合、「頭痛や吐き気、心拍数の増加、不安感、不眠、下痢、手足の震え、嘔吐や意識障害」につながる可能性もあるため注意が必要です。
ざっとみると、不整脈(心臓)に関係するものと、抗菌薬が多く含まれていることが感覚的にわかると思います。
これとは逆にカフェインの効果を弱めるものとしては、代謝酵素を誘導するタバコ(喫煙)が有名です。弱めるだけならあまり危険性はありませんが、喫煙していた人が禁煙をした場合には、逆にカフェインの効果が強くなることも頭に入れておく必要はあると思います。
さいごに
厚生労働省のホームページにもカフェインに関する情報が記載されているので、簡単にご紹介しておこうと思います。
Q1 1日のカフェインの摂取量(上限)は?
カフェインを一生涯摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される1日あたりの摂取許容量については個人差が大きいなどの理由で、日本でも国際的にも設定されていない。
健康な成人:400mg コーヒーをマグカップで約3杯まで(カナダ)
妊婦:コーヒーを3~4杯で(WHO:世界保健機関)
200mg コーヒーをマグカップで2杯程度まで(英国)
300mg コーヒーをマグカップで2杯程度まで(英国)
※妊婦がカフェインを取りすぎることによるリスク
=出生児が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性
=自然流産を引き起こす可能性
カフェインの致死量は代謝酵素の影響もあるため、一概には言えないが、3~6g/日程度で死亡に至るケースが多いと言われています。エナジードリンクでも20~30本とあり得ない量だろうと思うかもしれませんが、カフェインを含んでいる飲食物は多く、また眠気覚ましのカフェイン錠や飲料との併用により中毒量に至るケースも少なくありません。
あまりニュースをみない妻でさえ、エナジードリンク大量摂取による死亡例のニュースを聞いてしまってからは、エナジードリンクの缶をみるたびに嫌な顔をするようになっています。
カフェインは日常生活で活動量をあげるために今や不可欠になっている方が多いと思います。
カフェインを知って上手に付き合っていきましょう。