はちみつとクスリ

2020年4月7日

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お薬を患者さんにお渡しするときに

「私、はちみつ食べても大丈夫かしら?飲んでる薬との飲み合わせは大丈夫かなと思って」

という質問をいただきました。

「はちみつって。。。。」と少し考えましたが、はちみつと言えば”甘い” ⇒ ”甘い”と言えば”糖” ⇒ ”糖”といえば”糖尿病”という発想しかそのときは思い浮かびませんでした。

あとから調べてみると、国産のはちみつ(アカシア蜜とレンゲ蜜)は低GIのものが多いようで血糖値の上昇が緩やかな食品に該当するようでした。

今回の患者さんについては糖尿病の基礎疾患もなく、血圧、胃腸系の薬のみであったため、そもそもはちみつに相互作用なんてあるのか?という思いから、特に問題ないですとの回答で終わってしまっています。

そもそも蜂関係で、「はちみつ」以外にも、「ローヤルゼリー」「プロポリス」「マヌカハニー」などいろいろな名前が出てきますが、その違いについてもはっきり理解していませんでした。

そこで各製品の特長とクスリとの飲み合わせについて考えてみたいと思います。

その前に、なぜ今回突然患者さんが「はちみつを食べたい」と思ったのかも疑問だったのでインターネットで検索したところ

2020年3月10日放送の【林修の今でしょ講座】でハチミツが取り上げられており、「ウイルスや細菌を撃退する」「抗菌効果」の話がされていたようで、「これか!」って思いました。in vitroのひとつの研究成果のみをとりあげてウイルスの増殖を抑える効果があると言ってしまってもいいものなのか?

テレビが患者さんに与える影響力は絶大なので、TV放映については是非誇大広告にならないような正確な情報を期待したいと思います。

はちみつ

はちみつとは、ミツバチが花の蜜を採集し、巣の中で加工、貯蔵したものをいいます。簡単に言うと【蜜】です。

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マヌカハニーは、ギョリュウバイの花からセイヨウミツバチによって採取された蜂蜜であり、主にニュージーランドやオーストラリアなどで栽培されていますが、要は蜜です。

有効性については、効能の可能性が示唆されているレベル

・皮膚に塗布して治癒の促進(ガーゼにしみこませて使用)
・咳 (粘液の分泌促進による気道の保湿と考察)
就寝前にはちみつを少量(2.5~10mL:小さじ0.5~2杯)摂取
⇒ 2歳以上の小児で咳緩和
デキストロメトロファンと同等の効果

が挙げられています。

相互作用については、まだ明らかではないというレベルです。

Pubmedで、HoneyのDrug interactionについて調べてみると2件ほどヒットしてきました。

Daily honey consumption does not change CYP3A activity in humans.
J Clin Pharmacol. 2011 Aug; 51(8):1223-32. Epub 2010 Dec 8.(PMID:21148046)

Effect of concomitantly administered honey on the pharmacokinetics of carbamazepine in healthy volunteers.
Methods Find Exp Clin Pharmacol. 2003 Sep; 25(7):537-40.(PMID:14571284)

いずれもCYP3A活性に関連するもののようでしたが、どちらも影響を与えなかったというになっていると思います。とにかく報告自体が少ないためはっきり言えないのが現状です。

ローヤルゼリー

ローヤルゼリーは、ミツバチが分泌する乳白状の物質です。構成成分は、水分:60~70%、蛋白質:12~15%、糖質:10~16%、脂質:3~6%、その他ビタミン、塩分、アミノ酸となっています。

ローヤルゼリーを食べられるのは、嬢王蜂だけであることからローヤルゼリーという名前がついているようです。

有効性については、科学的データが不十分なレベルですが、

PubmedのRCTなどで有意差がついたとされているものとして

・脂質改善効果
・更年期障害の症状緩和
・口内炎の改善促進(化学療法、放射線療法)
・ドライアイ
・月経前症候群(PMS)

などが挙げられています。その効果についてはさらなる研究が必要そうです。

相互作用については、ワルファリンとの相互作用が挙げられています。

Warfarin and royal jelly interaction.
Pharmacotherapy. 2006 Apr; 26(4):583-6.(PMID:16553520)

INR1.9~2.4でコントロールされていた87歳アメリカ人男性が、定期受診の4週間後に血尿で救急部に来た際にINRを測定したところ6.88まで上昇しており、入院後はさらに上昇していたというもの。その経過をたどっていくと、ローヤルゼリーとの因果関係が高く相互作用の可能性があるというものです。

1例報告なので何とも言えないところはありますが、ワルファリンの作用を増強する可能性があると結論づけられています。

プロポリス

プロポリスは、蜂の巣の隙間を埋める封止剤として使われていて、ミツバチが木の芽や樹液などから集めた樹脂製混合物です。巣の腐敗・微生物の汚染防止・振動軽減・補強などの目的で使われるようです。

有効性については、効能の可能性が示唆されているレベル

・口の手術後の痛み、炎症の治癒、軽減を促進
(5%プロポリス液で洗口)
・性器ヘルペス(3%プロポリス軟膏1日4回塗布)

が挙げられています。

その他、免疫調節、抗腫瘍、抗炎症、抗酸化、抗菌、抗ウイルス、抗真菌、抗寄生虫作用などの生物学的および薬理学的特性も期待されています。

相互作用については、まだ明らかではないというレベルです。

Pubmedで、propolis のDrug interactionについて調べてみると1つヒットしてきます。

Evaluation of potential herbal-drug interactions of a standardized propolis extract (EPP-AF®) using an in vivo cocktail approach.
J Ethnopharmacol. 2019 Dec 5;245(PMID:31442620)

カフェイン、ロサルタン、オメプラゾール、メトプロロール、ミダゾラム、フェキソフェナジンなどを利用して、プロポリス抽出物(EPP-AF)がその代謝酵素活性に影響を与えるかを試験したものです。AUCが減少または増加した薬剤もありましたが、その差は統計学的に有意ではなく、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6およびCYP3Aの活性を臨床的に変化させないことを示していると結論づけられていると思います。

しかし、相互作用はCYPに関連したものだけでもないため、まだ未知の部分は多くあります。

さいごに

ここまでそれぞれの有効性と相互作用についてみてきました。絶対に大丈夫ですよと言い切れるものはありませんが、現段階の情報では、はちみつとクスリの相互作用の可能性は低いと言えるのではないかと思います。

患者さんの質問から自分で調べることにより知識となって積み重なることが多くあります。これからも少しずつ振り返り、まとめを続けていければと思います。

【参考資料:健康食品・サプリメントのすべて(Jahfic)】

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